「うんうん」という頷きのサインを送ります

 私は20114月から,ほぼ月に1回のペースで吉里吉里を訪問させていただいています。2012年の4月から現在までは,ほぼ月に1回のペースでボランティアハウスに宿泊させていただき(03日の弾丸ツアーのため宿泊しないこともありますが),津波の塩害で立ち枯れた杉の伐採・搬出作業に関わらせていただいたり,薪割りをさせていただいたりしながら,現在に至っております。

 

 このたびご縁がありまして,みんみさんから「吉里吉里国をそっと応援する会」に文章を寄せて欲しいとご依頼いただきました。さて,何を書こうかと迷ったのですが,吉里吉里国で作業をさせていただきながら考えたことを書かせていただくことにいたしました。

 

 吉里吉里国でスタッフの方々と一緒に作業させていただいているとき,「オレって一体ここで何やってんだろう?」と思うことがときどきありました。もちろん,勤務先である大学には「吉里吉里復興支援活動に従事します」と出張届けを提出してから出向いているのですから,「支援」もしくは「援助」をしていることになっています。でも,私はチェーンソーも使えません。バックホーも運転できません。植生に関する知識も乏しいですし,復興支援の専門家でもなければ,補助金や助成金についての知識もありません。そんな私が何か活動することが「援助」になり得るのだろうか。素朴に疑問に思うこともありました。

 

 ですが,よくよく考えてみると,そもそも「援助」活動の成否は,援助者には評価することはできないということに思い至りました。たとえ援助者が成果をあげたと思っていても,援助される側(「被援助者」と呼んでおきます)がそう思わなければ,援助が奏功したとはいえないでしょう。逆に,援助者にとっては有用性がわからなくても,その活動によって被援助者が「楽しい」とか「嬉しい」と思ってくれたなら,結果として援助になっていると思うのです。ということは,援助活動の成否は,被援助者によってのみ評価できるのであり,援助者にその評価はできない(ただし,被援助者がどう評価しているかを推測することは可能ですが)ことになります。だとすると,私の活動が「援助」たり得るのかなどと額にしわを寄せて悩むのではなく,被援助者が「楽しい」とか「嬉しい」といった感情を抱いてくださるように活動すればよいと,少し気楽に考えることができるようになりました。

 

 でも,一体どういったときに,そのような感情を抱いてくださるのか。考え始めるとわからなくなります。そこで,感情がストレートに表出される子供を事例として考えてみたいと思います。

 

 子供たちが人との関わりの中で(そう,ひとり遊びで楽しんでいる時ではなく)「楽しい」とか「嬉しい」といった感情を表出するのはどういう時か。それは,「すごいな〜」「よくできるね〜」「よく頑張ったね〜」などと褒められたときではないでしょうか。つまり,子供たち自身が関わりのある他者に認められたと感じているときそのような感情が湧き出すように思われます。他者から認められると,自分を肯定的に捉えることができるようになり,それが「楽しい」とか「嬉しい」といった感情につながるのでしょう。逆に,自分を肯定的に捉えることができないとき,落ち込んだり,悲しくなったりするようです。

 

 だとすると,援助の本質は関わりのある他者(被援助者)を「認める」ことにあるということになるのではないでしょうか。被援助者にとっては,自分の活動を,ひいては自分を認めてくれる他者が存在することを知ることにより,自分を肯定的に捉えることができるようになり,それが「楽しい」とか「嬉しい」という感情につながりうるのではないかと思うのです。

 

 じゃあ,他者を「認める」ってどうやるの?という話になりますね。それは「認めている」というサインを送ることによって実現されると思われます。人と人とのコミュニケーションにおいて「認めている」というサインは,頷いたり,微笑んだり,「なるほど◯◯ということをおっしゃりたいのですね」と言葉を反復することによって送られているようです。想像してみてください。教室で100名程の学生を相手に話しているとき,学生さんが「うんうん」と頷いてくれるとき,どれほど話し手が勇気づけられることか。逆に,視線を下に落として,お前の声など決して聞きたくないとばかりに,必死にスマホをいじっている,そんな学生に対して語りかけるときのむなしさを。

 

 話が逸れ失礼しました。こうやって「援助ってなんだろう?」と,つらつら考えてみたところ,どうやら関わりのある他者を『認める』ことにある」と思い至ったのです。となると「そっと応援する会」に寄せる文章にまず求められることは,「うんうん」という頷きのサインを送ることだと気づきました。そんなわけで,このような駄文を寄せさせていただきました。最後まで目を通してくださいまして,誠にありがとうございました。

 

 

浅川達人(あさかわ たつと)